祖母は、ある日、針を置きました。
私の祖母は、着物の仕立てを仕事にしていました。長く続けてきた仕事でしたが、年齢を理由に、あるとき針を置きました。母は今も茶道を続けています。けれど同じ流派に集まる人は、年々少なくなっています。
伝統が失われるとき、大きな出来事は起きません。ひとりが手を止め、集まる人が一人ずつ減っていく。ただそれだけです。誰かが動かなければ、そのまま静かに終わってしまう。それを家族のすぐ隣で見てきたから、私は自分が動かなければと思いました。
tradinect one は、沖縄本島北部の本部町を拠点に、夫婦二人で営んでいる小さな事業です。大きな組織ではないぶん、職人一人ひとりと直接会い、その人のペースに合わせて進めることを大切にしています。
私たちは最初から伝える側として工房を訪ねたのではなく、まず教わる側に立ちました。心を動かされたのは技術そのものではなく、その技術を選び続けてきた人の生き方だったからです。だから作品を紹介するときは、必ずその人ごと紹介します。